紅い雲

 紅の飛行艇が引く雲の向こうから、蒼い島が見えてくる。
 この世で一番美しい雲はきっと夏の積乱雲でも入道雲でもなくて、こいつの引く雲に違いない。空中戦闘からアジトに帰ってくると、俺はまずワインを飲む。ハンモックに寝転がる。ラジオをつける。そうやって、また次の飛行まで体を休める。
 けたたましく電話が鳴る。空賊は今日も遊んでやがる。島のバーでどうせ今日も会うだろう。今日は仕事はもう無しだ。飛行艇のエンジンちゃんも休ませないと。お遊びはまた今度だ。
 紅の飛行艇が日中にバーに着くと女性が駆け寄ってくる。俺は何の気なしに飛行艇を降りる。
 雲は今日も艶やかで美しい。





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