イメージと夫婦関係

 「きっと君はこうすると思ったよ」「そう、私はあなたのいいなりになるつもりはないし、言うけど、こうすると思ったことはあなたの幻想なのよ」「……どういうこと?」「私はあなたがこうして欲しいと思ったことをしただけに過ぎないってこと」「……つまり?」「人を思い通りにしようなんて、簡単じゃないのよ、あなたの思い通りになったと思うことは、そのほとんどが私の気遣いなの」「……。」「夫婦だとしても、夫婦を装っているだけなのよ。ただ気心が知れている間柄を演じているに過ぎない。あなたが良い気分でいられるのなら、それで良いと私は思ってきた」「ずっとずっと俺はお前の掌の上だったってこと?」「夫はいつも妻の掌の上よ」「ぞっとする。そういうことを言ってしまう君に」「夫婦ってなんだったんでしょうね。私にはわからないわ。ただ一緒に暮らしてる人? こんなにも向き合わないのに、愛してるだなんて、可笑しいわ。思い通りになるという幻想にも気がつかないのなら、そんなもんなのよ」「……。」「この人はこうであると決めた瞬間に、その人はそうでなくなるのよ。私たちはいろんなものを着込んで生きているけど、それを脱ぐ時もあるし、側からはそう見えたとしても、違うものだってこともある」「君のことを見くびっていた。そんなこと考えていたなんて」「こうと決めたイメージから逃れたいのよ。期待は裏切りたいし、固定されたイメージを愛されることを拒むものなのよ。私は私を愛して欲しいし、私のイメージを愛されたいわけじゃない。私をどういう風に思ってるかは、なんとなくわかってるけど、それが私の全てではない。こういう人間だから、こうするだろうという意図に私は嵌まりたくない。夫婦だとしても」「君だって俺のことをこういう人間だと思っているだろ」「でも私はあなたのこと、あなたの実態を見つめてたと思う。あなたはそうではなかったけど」「……。」「大事に思うんなら、更新し続けることよ。私はずっと変わってきたし、これからも変わって行くでしょう。あなたが私だと思っていた私は、私のイメージでしかなくて、あなたの知らない私もあるし、あなたに全てを見せているわけでもない。私をもっと見て欲しかったし、偶像を愛してる人を愛し続けることなんてできない」


*この文章は昨日の文章: イメージの相手と本当の相手https://otona-to-kodomo.blogspot.com/2017/09/blog-post_4.html)を元にして書かれた文章です。

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