人魚姫
人魚姫は下半身を足に変えてもらう代わりに声を失った。歩くたびに激痛の疾る足。自分の恋を成就させなければ、泡となって消えてしまう呪い。
人魚姫は、助けた男に恋をして人となることを望み、足となる薬を飲む。命を賭して人となる。声を失い、歩くこともままならない。男を助けた事実も告げることができず、姫は行き場を失ってしまう。
言い訳をしていては生き残ることはできない。このままでは泡となってその身は消えてしまう。あらゆる弱さを捨てて姫は恋に生きる。それが彼女のすべてだから。この世に在るためのすべてだから。
伝わらない想い。人を恋に落とすことの難しさ。自分を見つめて欲しいのに、そうはいかない歯がゆさ。失われた声はどこへ行ったのだろうか。この足の痛みはなんの所為なのだろう。
声をなくしたことも足の痛みにも意味などなく、ただ失われ、ただ痛むのだろう。それは何かの思し召しでも、差し金でもなく、ただそう在るだけなのだ。
何に於いても男に恋をした自分に依っている。恋の病は治せない。やるべきことをやらなくては私は消えると言い聞かせる。今日も男はやってくる。しかしうまくいきそうにない。
できることをし尽くして、そうして私は泡となりたいと願う。ただ願う。行動する以外になく、そして、人の気持ちをどうすることも叶わない。
ただ目でうったえることしかできない。私にできることはなんなのか。姫には考えても考えてもわからない。自分の魅力とはなんなのか。自分にできることはなんなのか。どうすればこの恋は成就するのか。どうすれば泡にならず生きられるのか。
やがて王子は女性と結ばれ、人魚姫は泡となって海のもくずと消えたのだった。
コメント
コメントを投稿