代えられないうれしさ

「いいじゃない」「そう? ありがとう! あなたに褒められるとうれしいの」
 第三者がそこで口を挟む。
「いや、こんなのダメじゃない?」
 あなたはそのあと言ってくれる。
「いや、いいと思うわ。これとてもいいわよ」
 私はうれしくなる。
「そう? わかってらっしゃる! 誰に褒められるよりあなたに認められることがうれしいわ」「そう? 誰だって一緒でしょう」
 謙遜なのか、なんなのか。
「そんなことないわよ。あなたは私にとって特別。私のしたことであなたに褒められることが私のある時期の目標よ。こんなこと今だから言うけど」「そうなの!」「なんていうか、誰に認められるよりもうれしい人よ、あなたは」
 誰に何を言われようと、この人に褒められたら、それでよかった。そのことだけを目指していたと言えるかもしれない。私の認めた人。その人に認められることに勝る喜びは、たぶんないだろう。
「……。」
 黙るあなた。目がうるうるしてる。
「こんなこと口に出しちゃうのはあれだけどね」
 なんだか戦友と共に帰国した人みたいだ。自分のしたことで誇りを持てる瞬間。自分で納得したものを、認めた人に認めてもらえる。そんな喜びは、外に向かって仕事してるから味わえること。一人でいても、決して味わうことのできなかった喜び。自分の達成感の上にある喜び。人に認めてもらえる、しかも、自分がこの人と思った人に。僥倖は人がもたらしてくれる。自分がしたからこそであるけれど、でもこの人が存在しなかったら、私はこんなにうれしい気持ちにはならなかったろう。どんな批判も、今だけは受け付けない。この人がこれを言ったのだから。

コメント

このブログの人気の投稿

寝付けない私に、母が話してくれたこと

どう思われてもいいという思考

つっかえたものを取ること

人とひとが出会うことの表現の可能性を知りたい

言葉の力を思考/施行する

正しいからしても良いと思うと、間違っていることに気がつかない

補助輪