嘘ついて?

「なにか嘘ついて?」

女は男に言う。切迫した雰囲気が伝わってくる。終電である。

「愛してる。」

「嘘つき。」

女は泣きながら男に寄り添っている。その魔性は男を困惑させる。この後二人はどうするのだろう。私は電車の車内で二人を見ている。

「奥さんがいるなんて、嘘つき」

「……。」

車内が修羅場となっている。女はなおも笑いながら言う。

「なにか嘘ついて?」

「君を幸せにする」

「嘘つき。」

二人には周りの乗客は見えていないようだ。車内にはとても気まずい空気が流れている。ここにいる全員が二人の会話を聞いているようにさえ思える。すし詰めの終電。誰一人ここから逃れることができない。男も。女も。乗客の誰も。

 そうして沈黙した電車は終着駅に着く。白タクに次々と人が乗り込んでいく。

 二人は見つめあったまま其処から動かない。夜明けまでまだ5時間ほどある。街に溶け込んでいくふたりを見送って、私は家路に着いた。



このツイートを元に妄想して書きました。

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