嘘ついて?
「なにか嘘ついて?」
女は男に言う。切迫した雰囲気が伝わってくる。終電である。
「愛してる。」
「嘘つき。」
女は泣きながら男に寄り添っている。その魔性は男を困惑させる。この後二人はどうするのだろう。私は電車の車内で二人を見ている。
「奥さんがいるなんて、嘘つき」
「……。」
車内が修羅場となっている。女はなおも笑いながら言う。
「なにか嘘ついて?」
「君を幸せにする」
「嘘つき。」
二人には周りの乗客は見えていないようだ。車内にはとても気まずい空気が流れている。ここにいる全員が二人の会話を聞いているようにさえ思える。すし詰めの終電。誰一人ここから逃れることができない。男も。女も。乗客の誰も。
そうして沈黙した電車は終着駅に着く。白タクに次々と人が乗り込んでいく。
二人は見つめあったまま其処から動かない。夜明けまでまだ5時間ほどある。街に溶け込んでいくふたりを見送って、私は家路に着いた。
このツイートを元に妄想して書きました。
「なにか嘘ついてください」って上司っぽい男性に泣きながら笑っている女のひとがいてつらいです終電です
— 七重 (@46thu) March 31, 2017
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