愛する

 あの日出逢ってから、今日まで、ずっと君のことを思い続けてきた。君のことを思わなかった日はない。僕はいろんなことを考えることができるし、いろんなことをすることができるはず。
 だけど、君を愛するということが、ずっとできなかった。なんだか、許されないような気がしてて。
 こんな自分情けない。僕は自分が卑屈だと思う。不甲斐ないと思う。楽しいことも、そうじゃないことも、考えたいし、したい。君と一緒に。
 君と一緒にいるときの、僕は、ちょっとはマシになれるような気がしてる。そうでもないのかな? 自分ではよくわからないんだけど、でも、君のことを考えただけで、心がピリッとして、引き締まる。目の前のことをなんとかしないと、という気持ちが、とても強い気持ちが、湧いてくる。これは、君じゃないとダメなんだ。
 君がきみだから、僕はぼくでいられる。そう思う。僕がぼくだから、君がきみでいられるのだとしたら、こんなにうれしいことはない。
 自分のことを卑屈に思うのは、なんだかしのびない。一人で勝手に悩んで落ちてるだけだ。自己満足に悲しんでるだけ。自分を下にみたいだけ。卑下することで、自分をなんとか保とうとしてる。失敗したときの言い訳になるように。大した人間じゃないとわかった時にがっかりしないために。それは、自分に対しても、君に対しても。
 つまり保険を打ってるってこと。安パイに生きようとしてるということ。
 そして、それは卑怯だってこと。
 たぶん、僕はまだ成長できる。君となら、成長できる。君なしの人生なんて、考えられない。いつしか僕たちはこうなった。愛し合うようになった。僕は卑屈だけど、とても卑屈だけど、君はそれを解こうとしてくれた。それが僕にはうれしいことだった。
 でも、まだ、きちんと、愛せてないって思う。
 愛そう、君を。勇気をもって。
※この掌編はフィクションです。

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