真夏の夜の散歩 同居人
──AM3:30。今日も二人は深夜の散歩をしている。相変わらずの彼女たちらしい。
「この間ちゅーした人」「うん?」「うん」「なにさー、ほれほれ~」「好きになった。完全に」「……そうなんだー」「笑うよねー」「ふーん」
──同居人に秘密を言うと、あたしはなんだか小っ恥ずかしくなる。こんな話を人にするのは初めてだ。女子らしく、普通の女の子らしくできているんだろうか。
「そうなんだー。あのさ」「なに?」「わたし、家でようと思ってんだけど」「え? なんで?」「彼氏出来た」「ナニー!!」
──同居人はわたしがモヤモヤしている間に、同居人でなくなろうとしている。人は簡単に恋に落ちるし、簡単に住まいを変えることができる。それは良いことだし、あたしだって彼女を応援したいと思ってる。
「……そうなんだー。へー」「だから年内に出てくから。考えといてね」「エー、そうなんだー、えー」「えへへ。あんたも頑張んなさいよー」「余計なお世話だよー、くそー」
──あたしは池に着くと、サンダルをすっ飛ばして膝まで池に入った。池の底はヌメッとしてる。あたしはこの想いをあなたや彼に救って欲しいと願ってる。この気持ちをどうしたらいいのかわからないのだ。あたしが彼を好きなことが彼には関係ないように、彼女がこの家を去ることも彼女にはきっと関係がない。だけど……。
「あのさ、あたし一人で暮らすよ。ここに」「そう」「離れるの、惜しいよ。池もあるしさ。たまには遊びに来てよ」「うん、来るよ。家が二つみたいになったら楽しいかも。さっこが居てくれたら、良いね」「うん」「またこうやってわたしは起きてて、さっこは起きて来て、散歩したいね。」「そうだね」「じゃあ、ベッドだけ置いてくわ。また来られるように」「いいねー」
──救って欲しいと願ってた気持ちをなんとかしたのは、他ならぬあたし自身だ。人に何かを求めたって、いつもその通りになるってわけじゃない。自分で自分をなんとかしながら、あたしたちはきっと生きてくんだ。きっとそうなんだ。そう思えたら、いろんな人とうまくやってける気がした。
参照
真夏の夜の散歩
https://otona-to-kodomo.blogspot.com/2017/08/blog-post_23.html
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