赦してほしい

 どうすれば、赦してくれる。何をしたら、何をしても、僕のことを君は赦してくれないだろ。欲しいものがあるってわけじゃないだろ。わがままじゃないってこともわかる。意固地になった君を溶かすものはなんなの。君の気に入りそうなこと探しても、どれも適わないって気がする。そういうことじゃないのだろ。
 愛してるさ。
 でも、それだけでもないのだろ。身体で示す。心で示す。それでも足りないのだろ。君はきっと赦さない。そんな気がしてる。
 君はこのことの復讐を、君が幸せになることだ、と思ってるだろ。それでいいよ。君が幸せなら。僕はそれでうれしいさ。赦されなくてもいいのかもしれない。それはこっちの問題だから。ただ僕がすっきりしないってだけだろ。君が幸せならそれでいい。
 振り向いて欲しいわけでもないし、君を奪いたい夜でもない。ただ君を幸せに『したかった』。でもそうはできず、僕はなんだか恨まれているような気になってる。
 僕を赦して。君を愛せなかった僕を。
 僕は自分だって愛せなかった。君はもう今は僕を愛してはいない。それはわかってた。そんな気がしてた。ただ恋に恋してる君に振り回されて。僕たちはもうメチャクチャで。自分を愛してない自分を基に、人に愛されるなんてできなかった。だから。
 だから、僕は自分と同じように、君を愛さなかった。愛せなかった。そのことを詫びたい。かといってもう何ができるというわけでもないけれど。赦してくれるなら、きっと、何かが僕の中で晴れるだろう。天晴(あっぱれ)さ。
 君と僕はもう関係なく生きていて、君はきっと幸せで、僕はたぶん不幸せで。これで君の復讐は成っている。だから。
 だから、僕をもう赦して。僕を解放して。僕の中の君にそう言いたい。止まった時は、きっとこのまま動き出さない。そうさせているのはたぶん僕自身で。僕の中の君で。
 きっと、君の海の中にずっといたいのだろう。君を想っていれば、幸せな気がするから。だから。
 だから、僕は一人でいたんだ。そんな呪い。君はもう今の僕のことなんて知りはしないだろ。僕の中の君がそうしてる。もういいだろ。だから。

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