嗾(けしか)ける人

 私はあなたを嗾(けしか)ける。あなたは私を嗾ける。そうやってDNAのらせん構造のように上ってく。互いがいなくてもたぶん僕たちはうまくやるだろう。でも、あなたがいた方がきっとより速く上がれるだろう。気づけることもあるだろう。
 互いに欠けた部分を補いあって僕たちはのぼってく。二人でいるから正しくなれる。
 一人でも生きられるが、誰かと生きるならあなたがいい。その方がより正しく生きられる。できないことを補完しあって、僕たちは生きていく。
 信じることは、誰が相手でもできるわけじゃない。あなただから、できるのだ。あなたでなければならないのだ。
***
「できないんだー?」
 その一言でいい。それだけで私の心に火をつけるのに充分で。それだけで私がやる理由として充分で。心が動けば動くほど、私は躍起になるだろう。自分の実力以上の力を発揮できるだろう。そうやって僕は上って行きたい。できなかったことができるようになる時、私はあなたのことを感じてる。
 ──君に請われることの、うれしさよ。
 望みを叶えることを、惜しみたくない人。どんなことでも叶えたくなる。すべて口惜しいことは君の望みを叶えられないこと。できうる限りをしたいと思う人。
***
 無言の要望でもいい。私がしないときに、(できないんだ)と思う、それだけで私は躍起になる。ただあなたがここに存在していることが、私の成長につながっている。限界突端の発端なのだ。やる気になるのだ。なんだってできるのだ。
 ──だからやるのだ。
 ただいるだけで、それだけで。あなたを感じることが、私を躍起にさせる。
***
 嗾けること。私だけの到達点は、二人でなら簡単に超えるだろう。二人三脚の方が速く、遠くへ行ける。一人ではいけないところへ行ける。二人だからできること。二人だから行ける場所。
 僕はそうしたい。そうしなければならない。そうしなければ気が済まない。そうでない時間なんてありえない。
 ただ、君を想う。

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